2017.08.08 Tuesday
2017.02.21 Tuesday
次号の特集はクラリネット。なのでさっそく独占スクープを
これ、なんだかわかりますか?
クラリネットの一部分をアップしたものです。そう、右手の親指をかけるフックの部分です。最近はこのあたりにストラップを装着するひとも増えてきましたね。青く見える物体は、そのフックを固定するネジのあたま。そこに、有田焼を埋め込んであるのです。
はりつけてあるわけじゃない。そう見えるけどね。かなり細かい工夫が施してあって、ネジに埋め込んであるんです。すごい技術だ。
これは現在、某社で開発途上にある新製品。お許しを得て、ちょっとリークしてしまいます。
横で撮影した写真を縦にしたから不自然に「浮いてる」感じに見えるけど、紅いのも同じ有田焼のアクセサリー。シャレてるでしょ?
この部分って、絶対に聞き手からはみえない部分だからここにオシャレしてもしょうがないじゃない!という声が聞こえてきそうだけど、逆に「見えないところだからこそオシャレする」というオトナな趣味の人も多いはず。江戸時代の洒落人は羽織の裏地に凝ったり、地味に見える色に模様を施したりして「ぱっとみただけじゃわからないオシャレ」を楽しんでいたと言います。
もちろん楽器だから、音に悪影響があったらいけないから、現在シビアにテスト中なんですけど、次号発売までには決定するはず。
オトナなオシャレを楽しみたいクラリネット吹きのみなさん。注目しておいてください。
ちなみに、この取材時に有田焼ってなんなのかを学んできました。リンク先には現地(佐賀県有田町)の情報が満載。
だけど、実際に行ってみるとすごい迫力。焼き物で「迫力」を感じるってどういうこと?と思われるかもしれません。そんなあなたのために、音楽と焼き物の意外なつながりをご紹介して行きます。乞うご期待。
2017.02.12 Sunday
素晴らしかった下倉楽器ソロコンテスト
中高生のタフな技術力&精神力に脱帽
毎年恒例となっている下倉楽器主催のソロコンテストが、今年も華々しく開催されました。上の写真は、中学生の部で最優秀賞を獲得した野地梓恩(のじ・しおん)さん。千葉県市川市立第七中学。演目はリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第一番より(一楽章を短縮したヴァージョン)。
こちらは、高校の部の最優秀賞、荻美波(おぎ・みなみ)さん。茨城県立水戸第三高校。演目は尾高尚忠のフルート協奏曲の第一楽章(!)。自らの選曲で、なんと年明けからの練習で完璧に暗譜して完奏!音のひとつひとつの粒立ちが見事で、完璧に自分の音楽を奏でていた。将来、どんなことになっちゃうんだろう…と、夢が膨らんでしまい…おっと、ごめんごめん、まず「どこで、なにがあったのか」など、基本的なことをきちんと書くね。あまりにコーフンしてしまってごめんなさい。
2017年2月11日、お茶の水の駅のすぐそばにある「クリスチャンセンター」にて朝10時から開催された下倉楽器主催のソロコンテスト。今回無事にステージに登場したのは、中高生あわせて60名。
無事に、と書いたのにはワケがある。
エントリー自体はもうちょっと多かったのだけど、今年のインフルエンザはやはりかなりすごいみたいで、残念ながらインフル感染のために欠席された方が数名。なかには伴奏者がインフル欠場となり、ピアノ伴奏なしで見事にソロを吹ききった猛者も。全出場者中ただひとりチューバでエントリーした都立足立高校の竹川隼人さん、あなたのことです。ハダットの協奏曲、勇猛果敢に単独で挑戦したあなたの姿におじさんは感動しちゃったよ!
いやいや、他にも沢山の感動シーンが。超難曲に挑み、ところどころで失敗してもくじけずに最後まで吹ききるその姿。なんだかんだ言い訳をしながら挑戦しないですましている大人プレイヤーにこそ、その姿をみせてやりたかった。
ソロなんて無理、とか。
練習不足で、とか。
若いからできるんだよ、とか。
そういうの、恥ずかしいと思った。
このソロコンは基本的にクラシックを演奏するスタイルで、難易度はともかくすべて本格的にその楽器のために書かれたもの。「ともかく」とは書いたけれど、正直どの楽曲にもそこそこの難所があって、これを聴衆の前でひとり吹ききるのは並大抵のことではない。
完璧に暗譜して臨む凄腕の若者もけっこういて、手元採点(実はこっそり、ワタクシ独自の視点で採点していたんですね)でもそういう人はかなり高得点。いや、暗譜だから高得点というのではないよ。最初はまず目をつぶって音だけ聴いて、これはすごいみたいだ!と思ったら目を開けて確認…ということをしていたんですね。
上で紹介した荻さんも、そのひとり。演奏したのは高名な指揮者、尾高忠明の父である作曲家、尾高尚忠(ひさただ)の協奏曲。日本音楽史にその名を残す名曲を見事に演奏。たった一本の銀色の笛が会場を圧倒しました。
中学生のホルン奏者、野地さんも難曲として知られるリヒャルト・シュトラウスの協奏曲第一番を、制限時間の関係で抜粋ながら見事に演奏。
中学生が、リヒャルトを吹いちゃう時代なんですね…
「抜粋じゃないか」とか「カデンツァがないじゃないか」とか「まだ若いから早すぎるんじゃないか」とか…つまらんツッコミたくなるマニアがいるかもしれないけど、現場にいた人ならそんなツッコミがいかに虚しいかわかるはず。
彼女たちは、なんだかんだ理由を付けて「やらない」ヒトたちには絶対得られない、得難い体験をしたのです。
音楽史にその名を残す名曲に、若い感性でチャレンジすることがいかに大切か。
素晴らしい作品は、技術がつたないうちは内容的にも理解が及ばないかもしれない。
しかし、演奏する技術が上がってくるにつれてたくさんの養分を与えてくれるようになる。
彼女達のように、真摯に向き合い、ともかく形にしてみる、最後まで吹ききってみるという体験を若いうちに積むことは、必ずこれからの音楽人生とって貴重な体験となるはず。
出演者やそれぞれの受賞などについては、下倉楽器のHPにいずれ発表があるはず。金賞・銀賞・銅賞とランクがついても、みんな真摯な態度で音楽と向き合って板から、その点では全員がゴールド金賞!それはワタクシが自信を持って断言します。
そんな偉そうなことを言っていてヘタッピじゃん!と馬鹿にされないよう、頑張らねば。
2017.02.06 Monday
どえらいカルテット始まる
Tokyo Four-Seam Slider登場
最初その名前を聞いた時、聴き取れなくて何回も聞き返してしまいました。
神奈川フィルの長谷川博亮さん率いるトロンボーン四重奏団「Tokyo Four-Seam Slider」
トーキョー・フォーシーム・スライダーと読みます。シームというのは「縫い目」ということ。
「4つの縫い目」という意味と野球のスライダー、トロンボーンのスライドをひっかけたというのがその由来。
変化球のように変幻自在に音楽と色彩を操ることが出来れば…という願いをこめて命名されたそうです(プログラムより)。
メンバーは左から長谷川博亮・佐藤洋樹・伊藤敬二・西田幹の四氏。リンク先は、フリーの伊藤サン以外はそれぞれの所属楽団です。
フォーシーム・スライダーなんて書くと、野球の魔球みたいですね。
念のため説明しておくと野球では「ツーシーム」っていう、ボールの縫い目(シーム)に二本の指をひっかけて独特の回転をさせる投げ方があるんです。しかも「スライダー」がついてくる。どんなスライダーやねん!と思ったアナタは私と同じ思考回路。気をつけましょう。
話題がずれた。
2月4日に開催された彼らのデビューコンサート(東京・新大久保「スペースDo」にて)には、前の取材があったのでちょっと遅れてしまったのだけれど、扉を開けた瞬間心が蕩けた。
そのサウンドが実にふくよかで、ホール中に豊かな倍音が溢れていたのです。
伝説のレニングラードフィル(現サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団)のトロンボーンセクションに心酔する長谷川さんの選曲で、本当にやさしく力強いトロンボーンの響きが堪能出来ました。
ベッケやスローカーなどに先立つ時代、ベルリンフィルやレニングラードなどの超一流オケのトロンボーンセクションのLP(CDはまだなかったのです)は、それぞれ個性的な音色で日本のプロアマ奏者たちの尊敬のマトとなっていました。
なかでも長谷川さんが心酔するレニングラードフィルのトロンボーン四重奏団の演奏を収録したLPはCD化もされていない幻の一枚。
この日はそれらのアルバムの中から下記の楽曲が紹介されました。
イントラーダ(J.ペーツェル/編・長谷川)
ソナチネ(J.G.ライヒャ/編・長谷川)
フーガニ短調(J.S.バッハ/編・長谷川)
カルテット・フォー・トロンボーンズ(L.バセット)
バッハの技法で(J.M.デュファイエ)
ロマンス(G.S.ヴィリドフ/編・西田)
4本のトロンボーンのための組曲(K.セロツキ)
パリ風の組曲〜カルチェラタン/ブーローニュの森にて/ムーランルージュ
ジパングやティンツやトワイライトや…いまあげたのはHPをもっている団体のみだけど、思いつくままにあげていけばどんどん素晴らしいトロンボーン四重奏団の名前が言えちゃう素敵な時代になったけど、そこにまたまた素晴らしいチームが誕生。
ひとりひとりの音色の素晴らしさに心酔しちゃいます。特に、佐藤洋樹さんの幅広い表現力にあらためて感動!ソロアルバム、期待したいところです。
今回聞き逃した方は、次回ぜひ!