2017.08.08 Tuesday
2016.07.26 Tuesday
「仰げば尊し」オーネット・コールマンとサンライズマーチに対する考察
「仰げば尊し」(TBS日曜劇場)では、ちょこちょこと既存の楽曲が登場する(例によって下記の文章中の下線部分は参考音源や文献へのリンクになっているのでご活用ください)。
第一回で注目したのは二曲。まずは《ロンリーウーマン》。
どこに登場したのかというと「オケのプロのサックス吹き」(なぜ「オケの」に線を引いてあるかは7月25日付本欄で言及した考察による)である「樋熊迎一(ひくま・こういち)」がちょこっと吹いた曲を「木藤良蓮(きとら・れん)」が「オーネット・コールマン」と呟くシーン。
プロのサックス吹きという設定の「樋熊」先生、実はかなりジャズに傾倒していたのかも…と、ここはあえて善意の深読みをしておくべきだろう。
いわゆるクラシックのプロフェッショナルなサックス奏者には、ジャズにはまったく関心がないタイプとジャズに深い関心を持っているタイプに分かれる(その逆もまた真なり)。「樋熊」は後者のタイプ。
そして、ちょこっと聴いただけでそれがオーネットコールマンだとわかる「木藤良蓮」も、けっこうなジャズマニア?
このあたりが「樋熊」に「お前達、本当は音楽が好きなんだろう?」と言わせる根拠になっている…と、ここも善意の深読みをすべき箇所だ。
「いまどきあんな不良ありえねー」
「いまどきあんなクサい台詞ありえねー」
など、「ありえねー」というツッコミはたくさんみかけるけど、そこを面白がるより、善意の深読みをしていくほうが楽しいし知識を深めることになる、と俺は思うけどね。
次に、第一回目にいきなり登場した《サンライズマーチ》(岩河三郎の方。2005年の佐藤俊介さんの同名異曲ではない)についての考察。
どちらも全日本吹奏楽コンクールの課題曲として登場したものだが、おそらく「同名異曲」というのはこれだけなんじゃないかな…。
課題曲って言うのは、経験者のほとんどが中学高校の多感な時期にイヤっていうほど吹くものだから、面白いことに自分たちの中学高校時代の課題曲がベスト!と信じてしまい、それ以降は「つまんなくなった」と批判してしまうことが多いような気がする。
俺の場合だと、高校一年&二年は千葉県大会どまりのコース(当時は「二部」と言ったね)だったから《西部の人々》(ワルターズ)で、二年が《狂詩曲スペイン》(シャブリエ原曲、ワルターズ編曲 さすがにこの編曲版のリンクはみつからなかったのでリンクは管弦楽版)だったが、三年の時が《ポップス描写曲「メインストリートで」》。翌年があの不朽の名作?《ディスコキッド》だったから、正直「なんだ岩井さんのほうがよかったなあ→」と慨嘆したもんです(笑)。まだ二十歳前だったのにすっかりジジイみたいになって「昔は良かった」とか「課題曲は劣化している」とか言ったりして。
もとい。
顧問「樋熊」が「君たちにぴったりな曲をもってきた!」といって配る楽曲が、今(番組の設定は2015年)を去ること30年以上前の1982年の課題曲。
実際、ドラマの設定のベースになった「野庭高校」の実話では「樋熊」のモデルとなった顧問、中澤忠雄さんが同校吹奏楽部の顧問として着任したのが1982年。
つまり、この曲をいきなり登場させることでこのドラマが「ブラバンキッズ・ラプソディ」「同・オデッセイ」で紹介された野庭高校と故・中澤忠雄氏を下敷きにしているということを暗示している…というのは善意の深読みのし過ぎか?
まあでも第一話でいきなりこの曲が流れ、「ああ!あの時の曲や!」(→関西弁な訳はないけど)と感激したOB&OGも多かったのでは?そういう効果は確実にあったと思います。
第二回に「木藤良」がアルトでこっそり吹くシーンがあったけど、それは彼ら「悪い子組」バンドのオリジナル曲。サックス組み立てるシーン、とても手慣れた様子だったよね。プロフィールみると演じている真剣佑(まっけんゆう ご本名だそうです)フルート吹けるそうだし、音楽監督の山口れおさんのご指導よろしきを得て、短いけど楽器族も納得させる出来になっていると思うよ。
2016.07.25 Monday
TBS「仰げば尊し」絶好調だね☆
写真は、都合により掲載しないんでジミですが(笑)本誌8月号p19にあるんでじっくり見てね。
あ、あと、このブログ部分では下線がひいてあるところには関連サイトへのリンクが貼ってあります。ぜひクリックしてみてね。
TBS日曜劇場「仰げば尊し」(←はい、さっそくクリックしてみよう…そのあとで戻ってきてね)が絶好調な滑り出し。一部には同枠の前作より数字を落とした(前作は平均17.2%)と批判する声もありますが、視聴率ってその仕組みもよくわからないしなあ(苦笑)ここで「絶好調」と言っているのは本誌の考えです。まちがいなく「絶好調」な感じだと思う。まだ第二話見ただけだけど。
いろんなツッコミなんかもたくさん飛び交っているのも、人気が盛り上がってくる前兆だと思うのね。
本誌にはいろんなところから飛び込んでくる情報もあるし、こっちなりの追加研究などもしてみたんで、本欄でちょっとずつ紹介していきます。
誰もがツッコンでいる「オケのサックス吹き」だったという部分。顧問の「樋熊(ひぐま、じゃなくて「ひくま」)が元プロのサックス吹きだった…とすればすんだところを「オケの…」と、あり得ねー設定にしているのは確かに残念だけど、世間の見方はそんなところなんだろうな…と、ここは楽器族としては鷹揚(おうよう)に構えたいところ。いわば「善意の深読み」だ。
プロの吹奏楽団でサックスを吹いていた…という設定をしても、「プロの吹奏楽団なんて存在しない」なんて思っているのが世間の見方なんでしょう。海外では、プロとして活動を継続している日本のプロ吹奏楽団がいまホットな注目を浴び始めているというのに…まあ日本の「世間」というのはこんなもんなんです。上記の話(日本のプロ吹奏楽団が海外で注目)は、リアルに複数の海外トップクラスのミュージシャンから確認した情報なり。
オペラシティのタケミツメモリアルでのロケ(「樋熊」が抱えていた楽器ケースに注目した人も多いだろう。多くのプロが持っているセルマーやヤマハじゃなかった。中身は果たして???)のシーンは、善意の深読みをすれば下記のようになる。
プロの吹奏楽団もしくはフリーのプロフェッショナルとして活躍していた「樋熊」が、「ガヤネー(ガイーヌ)」組曲を演奏する管弦楽団からエキストラ要員で呼ばれたものの、怪我が理由でうまく吹けないもんだからドタキャンした…ということなんだろうね。確かに《剣の舞》にはアルトサックスのソロがあるからね。チェロとかぶっているから、ドタキャンしてもまあ影響はない(笑)。
「アルル…」とか「展覧会…」だったらえらいことになっただろうけどね。
で、その「オケのプロのサックス吹き」である「樋熊」が、とあるフレーズを吹いて、真剣祐(まっけんゆう)演じる「木藤良(きとら)蓮」が「オーネット・コールマン…」と呟くシーンがあったけど、ここで吹いていた曲についてはあらためて。
2016.07.21 Thursday
「しゅぽんたん」って知ってた?
しゅぽんたんSupontanっていうのはフランス語っぽいけど、実はドイツ語だったんです(リンク参照)
そしてそれは、あの鬼才「茂木大輔」さんが率いる三重奏団の名前だったりもしたのです。
こちらが茂木大輔さん。NHK交響楽団の首席オーボエ奏者で、世界的ジャズピアニスト山下洋輔さんの影響を深く受けた文才も素晴らしく、「オーケストラ楽器別人間学」などのベストセラーも多数。
で、そんな茂木さんが主宰する「シュポンタン」。ドイツで修業した茂木さんらしく、ドイツ語をグループ名にあしらったんでしょうけど、その意味は「自発的」ということ(先のリンク先には日本在住のドイツ人ハーフ、サンドラ・ヘフェリンさんが面白いこと書いてくれてるんでぜひ読んでみて)。茂木さんによれば、いい意味で使うとすると「とっさに」「急に思いついて」という感じの言葉。悪い意味だと、その場の思い付きで振る指揮者のことを言ったりするそうです。後者はアンポンタンにもつながる気がして、面白いね。
その「シュポンタン」初のコンサート。たぶん、茂木さんのことだから一筋縄ではいかないコンサートになるんだろうなあ…と思いつつ現場にぎりぎりに到着(前に所用があったので…)したところ、早速やられてしまいました。
なんと、前座にEnsemble Mega Ne(アンサンブル・メガネ)が登場していたのです。彼らのこと、実は本誌はこれを見てからほれ込んでずっと探していたんですね。
しかしこの日は先述のとおりぎりぎりに到着したために前座の彼らを聞き逃すという大失態。あー残念(なわけで、彼らについてはまた改めて)
本編は、オーボエの茂木さん、ピアノの岡田奏(かな)さん、ファゴットの河村幹子(もとこ)さんの3人による「シュポンタン」の演奏。オーボエとファゴットとピアノのための曲ってあるのかな…と思っていたけど、ベートーヴェン(原曲はクラリネットとチェロ、ピアノ)やプーランクの名曲を知ることができて感激。ちょっと調べたけど、他にはこの編成ってやっぱりなかなかないんですね。
ベートーヴェンの終楽章には、彼には珍しく他人の主題が引用されているということなんだけど、確かになんだかモーツァルトみたいな明るさのある楽しい主題。これをかなりダイナミックなアレンジで華やかに変奏していくのがスリリング。高いほうも低いほうもどっちもダブルリードだから、さわやかな感じが素晴らしかった。
そして後半ではアンサンブル・メガネのクラリネット奏者、法正茉莉香さんを交えて、茂木さんの名盤「山下洋輔組曲」を管楽器三人で再現。
これは圧倒的に面白かったね。たとえば落語「寿限無」をそのままアルトサックスで吹いた坂田明さんの名演で名高い《寿限無》や、パブロ・ピカソの本名(パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ)をテーマにした《ピカソ》などは、静かな響きの木管楽器合奏のほうがシンプルにその楽しさを味わえる気がした。
そして、待ってました!という感じの、全員そろってのアンコール。
アンサンブル・メガネのみなさんを交えて、彼らのオリジナル作品。ブラームスが映画音楽を書いたらこうなる?みたいな楽しい曲。あふれ出る才能がまぶしかった!!
タイトルがすごい(後述)これも寿限無みたい(笑
当日のプログラムを備忘録として記しておきます。
2016年7月16日 代々木の森リブロホールにて
前座:アンサンブル・メガネ
森亮平:某コンビニエンスストアの取材によるグランドヴァリエーション
テーマ/バロック時代のトリオソナタ風/モーツァルト風/ベートーヴェン風/ブラームス風/エルガー風/ムソルグスキー風/ラフマニノフ風/ストラヴィンスキー風/プーランク風/映画の予告編風
フルート:山本優音、オーボエ:篠原拓也、クラリネット:法正茉莉香、ファゴット:小林祐太朗、ピアノ:森亮平
トリオ・シュポンタン(オーボエ:茂木大輔、ファゴット:河村幹子、ピアノ:岡田奏)
ベートーヴェン:ピアノ三重奏(オーボエ、ファゴット、ピアノ)
サン=サーンス:ファゴットソナタ(ファゴット、ピアノ)
プーランク:愛の小径(ファゴット、ピアノ)
サンーサーンス:白鳥(ファゴット、ピアノ)
ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲(ピアノ)
茂木大輔アルバム「山下洋輔組曲より」
ブルーモンク/寿限無/ピカソ/クルド人の踊り/ジャズ大名
プーランク:3つのノヴェレッテより第一番 ハ長調(ピアノ)
プーランク:即興曲第三番 ロ短調(ピアノ)
プーランク:ノクターン(オーボエ、ピアノ)
プーランク:オーボエ・ソナタ(オーボエ、ピアノ)
プーランク:オーボエ、バソン、ピアノのためのトリオ(オーボエ、ファゴット、ピアノ)
アンコール:
アンコール用小品〜もしもブラームスが交響曲第一番を書き上げる前にハリウッドで成功してそのアイディアを宇宙系の映画音楽に転用したら
2016.07.14 Thursday
ビッグバンドスタイルの楽しいJ-POP&歌謡曲。アドリブはどう考えればいいのか?
2016/07/13 榎本記
奇想天外な政治の嵐が吹き荒れる梅雨のさなかに、さわやかなライヴが行われた。
今回はそのお話です。
日本のメロディをビッグバンドスタイルで…という企画なんだけど、当日使用された楽譜はすべて気鋭のビッグバンド楽譜を出版する「ベルミュージックプレス」からリリースされたもの。
海外の楽しい楽譜&CDの輸入元である「ミュージックストアー・ジェイピー」が主宰するこの出版社では、日本人が大好きな楽曲をビッグバンドスタイルで楽しめるように工夫された楽譜シリーズを数多く出版してきました。
それらは大阪を本拠に活躍するグローバルジャズオーケストラによって収録され、すでに3枚のCDになっています。
今回はそのレパートリーを東京のフレッシュなビッグバンド「スーパーレッド・ビッグバンド」が演奏する…というのです。
リーダーは、東京ブラススタイルでも活躍するトロンボーン奏者・海江田紅(かいえだ・べに)さん。バンド名は彼女のお名前(ご本名だそうです)に由来するそうです。上の写真はフルートとの2ホーンで展開する「スーパーレッドバンド」ヴァージョンの状態。フルートは左瀧知(さたき・さとる)さん。
リズム隊は下記のとおり。
ピアノ:佐々木健太
ベース:TOMまつを
ドラム:多田タカヒロ
ビッグバンドになると、メンバーはぐっと増える。上のリズム隊に加えて下記の皆さんが大熱演。
アルトサックス:丹沢誠二、宗像恒樹
テナーサックス:江澤茜、馬越脇崚
バリトンサックス:渡辺将也
トランペット:赤塚謙一、具理然、三上貴大、徳辰範
トロンボーン:島田直道、金城菜美子
バストロンボーン:沼尻卓也
ギター:法西隆宏
そして…
ゲストに、シャープス&フラッツや渡辺香津美さんとのデュオ、そしてRAG FAIRのプロデュースでも有名な幾見雅博さん(写真・いくみまさひろ)が登場。数原晋さんの「TOKYO ENSEMBLE LABO」への参加でも知られています。
この日幾見さんが演奏したのはSMAPの大ヒット《らいおんハート》は、ベルミュージックプレス版では単独の楽器のソロをビッグバンドが伴奏する…というスタイルでアレンジされています。幾見さんのギターが奏でるしみじみとしたメロディは感涙ものでした。
そして、アレンジは…
世界のヤマシタこと山下洋輔さんが全幅の信頼をおくトランペット奏者、赤塚謙一さん(写真)。彼はこのシリーズにもたくさんの名アレンジを提供。この日はリード奏者としても大活躍。汗一つかかず(いや、かいているのかもしれないけど全然そう見えない)クールに、しかしパワフルにリードとしてバンドをひっぱり、さらに卓越した一味違うアドリブで圧倒的な存在感をみせてくれました。
ちなみに彼は、最近ヤマハのウィーンモデル(YTR-8335WS)も愛用しているようです。写真の楽器がそれです。
ヴェテランの作編曲家にしてマルチ奏者、金山徹さんも表敬訪問。本誌は彼のオリジナル作品「ブラスロック組曲」の「第一組曲」および「第二組曲」(話題の「ブリッツフィルハーモニックウィンズ」や小編成吹奏楽団「小江戸ウインドアンサンブル」によって演奏され大好評を博しました)はホルストの衣鉢を継ぐ新世代の「一組」「二組」になるのでは…と思っています。
この日披露された金山アレンジは郷ひろみの歌で有名な《お嫁サンバ》。奇をてらわない真正面なアレンジが痛快無比。
いや、いろいろ考えさせられました
少なくとも、日本の歌謡曲とかJポップって、ビッグバンドとかジャズとか興味ない人でもよく知っているメロディラインというのが厳然と存在しているでしょ?
だからこういう場合のアドリブってホントむつかしいと思う。かといってストレートメロディを吹けばいい、というものでもないような気がするし…このアレンジにはいわゆる「書きソロ」というのがなく、コードが書かれているのみ。だからといって勢いや指癖で吹くのも、全体の流れから浮いちゃうしね…ジャズ(ビッグバンド)アレンジ特有の雰囲気を出すためのバトルなど、独自の編成を生かすアイディアはもちろんとても大事だけど、単独もしくは掛け合いのアドリブソロっていうのは、本当にむつかしいなと痛感した。
アドリブって、原曲あってこそのアドリブでしょう?ジャズをきちんと勉強したらたぶん原曲には関係なく、どんなコード進行でもアドリブはやれちゃうんだろうけど…どうなんだろう。
どの曲も素晴らしく強いメロディラインを持っているのだから、それに対するリスペクトを演奏者と共有したいわけです、聴き手としてはね。
そう、忘れないように、この日のプログラムを列挙しておきましょう。当日配布されたプログラムには基本的に作詞者も明記されていました。そのあたりに原曲に対するリスペクトが感じられ、とても心が温かくなりました♡なので、それに倣って…
恋の季節(作詞:岩谷時子 作曲:いずみたく 編曲:羽毛田耕士)
うれしい!たのしい!大好き!(作詞:吉田美和 作曲:吉田美和 編曲:桝田咲子)
上を向いて歩こう(作詞:永六輔 作曲:中村八大 編曲:宮哲之)
行くぜっ!怪盗少女(作詞:前山田健一 作曲:前山田健一 編曲:赤塚謙一)
セロリ(作詞:山崎将義 作曲:山崎将義 編曲:赤塚謙一)
ハナミズキ(作詞:一青窈 作曲:マシコタツロウ 編曲:赤塚謙一)
お嫁サンバ(作詞:三浦徳子 作曲:小杉保夫 編曲:金山徹)
妖怪人間ベム(作詞:第一企画 作曲:田中正史 編曲:羽毛田耕士)
Star Rain(作 編曲:TOMまつを)
All the things you are(作詞:Oscar Hammerstein II 作曲:Jerome David Kern 編曲:TOMまつを)
Omens of Love( 作曲:和泉宏隆 編曲:三塚知貴)
未来予想図II(作詞:吉田美和 作曲:吉田美和 編曲:三塚知貴)
らいおんハート(作詞: 野島伸司 作曲:コモリタミノル 編曲:赤塚謙一)
ベイブリーズ(作曲:真島俊夫 編曲:赤塚謙一)
Sweet Memories(作詞: 松本隆 作曲:大村雅朗 編曲:羽毛田耕士)
古い日記(作詞: 安井かずみ 作曲:馬飼野康二 編曲:三塚知貴)
アンコール
宇宙戦艦ヤマト(作詞:阿久悠 作曲:宮川泰 編曲:赤塚謙一)
2016.07.05 Tuesday
超絶の自営業者は「自衛」のひとでもありました
2016/07/05 榎本記
エイステイン・ボーツヴィックさんと久々の面会。愛器(ミラフォンのE♭管)から覗き込んでいるのは、このところ通訳などで大変お世話になっているチューバ吹き、木村圭太さん。学生時代からのボーツヴィックさんとのお話をまとめてもらっています。乞うご期待。
そもそも本誌がボーツヴィックさんと出会ったのはもう10年くらい前。例によって外人系のお名前の発音がわからなくって、何回もお聞きしてその時に決めた表記が「オイスタイン・バーツウィック」。
今回は招聘もとが丹念に彼と情報を交換して「エイステイン・ボーツヴィック」という表記になりました。
名前表記は変わっても、チューバ一本で世界を魅了する低音超絶旅芸人の実力は健在。
マドセン(マッセンという表記も)のソナタに始まり、自作のコンチェルトで満場の聴衆の心をわしづかみ(ルーテル市ヶ谷が満員!補助席もフル稼働)。
自作の協奏曲はとても聞きやすく心にしみるメロディが満載で、後半でも披露されたご自作(《きっと大丈夫 原題「Odner Seg」》)も含め、圧倒的な表現力は相変わらず。
そのほかに演奏されたのはバッハの無伴奏チェロ組曲第一番から「メヌエット1&2」、アンナ・ボーツヴィック《ニューキッド》、ピアソラの3つのタンゴ→これもニクラス・シーヴェレフさんとご自身の編曲で《天使のミロンガ》《ブエノスアイレスの冬》《アディオス・ノニーノ》。
そしてアンコールではお約束のモンティ《チャルダーシュ》。もう、チューバでこれが吹けるからといって(どんな楽器でも)驚くことは少なくなったのがなんだか哀しいが、超絶技巧よりもその歌心にしびれまくる。途中の即興コーナーで脱線して客席に乱入、伴奏者が怒ってステージに呼び戻す演出も「お約束」的(彼の動画にはオケ版で同じ演出も→https://www.youtube.com/watch?v=fYOsNp4O7AU)だけど、今回伴奏された新居由佳梨さんのキッと睨む演技が可愛くてナイスでした。
ラストは、ディジュリドゥ奏法(と勝手にこちらが名づけた特殊奏法)を駆使した《Fnugg》のさわりを披露。これ聞かなきゃボーツヴィックを聞いた気にならない人も多いことでしょう(本誌も、そうです)
YouTubeで見つけた「全曲版」はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=mHMyrhilkdo
そんな彼のミラフォンは、ご覧のようにベルカット形式。しかし単なるベルカットではない。
ここも、外れるんです。
つまり、こうなって…
スーツケースにどんぴしゃと入る。
凹まないように入念な気配りも完璧。
さすが世界をチューバ一本で飛び回る超絶の「自営」業者。自分の楽器は自分で守る「自衛」の人でもあるのでした。
2016.07.02 Saturday
動くルイ、唄うサッチモに感動。
2016/07/02 榎本
7月2日にはニューオーリンズの名誉市民でもある外山喜雄&恵子夫妻が主催する日本ルイアームストロング協会、第60回例会にお邪魔してきました。おふたり、なんと金婚式を今年5月に迎えられたばかり。50年目とは思えない?仲の良さは、見習いたいものです(汗
写真は、当日披露された外山さん率いる「ディキシーセインツ」の演奏。ドラムは関西で活躍するニューオルリンズ・ラスカルズの木村陽一さん、クラリネットは広津誠さん。
こちらがピアノ&バンジョーを担当する奥様の恵子さん。
この日は同協会の記念すべき第60回の例会だったのですが、そこで幻の映画「On the Road Again」(1963)と「サッチモ・ザ・グレイト」(1957)が上映されると聞き、駆けつけたのでした。
前者は外山さんご夫妻が仕事をやめてニューオーリンズに渡航したきっかけになった映画。船でロスアンジェルスにわたり、そこから始まる珍道中は外山さんの著書「ニューオリンズ行進曲」(現在は中古でしか手に入らないらしい)に詳しく出ています。
で、その映画が素晴らしかった(画像は…すみません、著作権の関係で掲示出来ないんです)。
実は本誌はつい先頃現地ニューオーリンズの取材に行ってきたのですが、そこで見た街の造作とほぼ変わらない風景が映画のなかにありました。そしてニューオーリンズ独特の風習であるお葬式や、初期のプリザヴェーションホールの様子など…これを見て、いてもたってもいられなくなった外山さんの気持ちは痛いほどわかる。
しかしねえ。
話が飛びますが、ちょっと当日むかっと来たことがあって。いや、協会に対してでもイベントに対してでもなく。
外山さんのコメントの中で、とある大学ジャズ研でルイ・アームストロングなんてジャズじゃない!というのが定説…みたいになっているという話が飛び出したのです。もちろんオトナな外山さんはそのあたり笑ってさらりと語ってましたが、これは聞き捨てならない。
ジャズじゃない、どころか、原点でしょ。
それ知らないで、難しい分数コードのアドリブらしきものをしかめ面して弾き熟すのがジャズだというなら、別にそんなジャズなんか俺は好きじゃなくて結構。
ちょっとアツくなってしまったので、心をサマします。
2016.07.01 Friday
ハンガリーから凄いやつらがやってきた
2016年7月1日 榎本記
ハンガリー出身の若きブラス族が五人。新宿ドルチェ楽器管楽器アベニュー東京ホールが、そのフレッシュな音に震えた。いずれも同国随一の音楽教育組織である「フランツ・リスト音楽院」のエリートばかり。最も若いトロンボーン奏者のアッティラ・スターンは1991年生れ、最年長のアンタル・エンドレ・ナズイは1983年生れ。若いクセに?カナディアンブラスのレパートリーを全部暗譜し、先代(カナディアンブラスのことね)そのもののようにステージ狭しと動き、音の響きを変えて楽しませてくれる。このあたりは「スパニッシュブラス」とも共通している(下写真参照)。
すべて暗譜で、しかもトランペット陣は頻繁に楽器を持ち替える(E♭→C→B♭、etc.,etc.,…)。涼しい顔でこなしつつ、こゆるぎもしない安定感で2時間のコンサートをたったまま吹き抜いた。その演奏能力もさることながら、身体能力の高さにも感動。本誌は翌日、管楽器専門店ダクの協力で彼らに直撃インタビューを試みた。そこで判明した衝撃の事実をふたつ。
まず最初は…たいしたことじゃありません。我々取材班には、彼らの正式な名前を発音することができなかったのでした(笑)。日本語とハンガリー語は、かつては同じ「ウラル・アルタイ語族」と考えられていたくらい親和性がある…はずなのに、実は残念ながら我々には発音出来ない(しにくい)文字があったのだ。もちろん、それはこちらの不勉強ゆえの問題。
ま、B♭管を両膝ではさみ、E♭管からすばやく持ち替える。がんばっているナズィ(Nagy)さん。いま「ナズィ」と書いたけど、実際には「gy」というスペリングは違う発音で、Gを発音しながら舌を軽く挟む…つまりカタカナでは表記出来ない発音なのでした。しかしアルファベット表記しておけばいい、というのもなんか気が引けるので、現在、彼らの愛器の輸入元であるビュッフェ・クランポン・ジャパンとともに「日本人的に正しい」名前を策定中。
しかしそれ以上に感動したのは、彼らが翌日取材(管楽器専門店ダクにて)の最後、我々取材班のためだけに演奏してくれた《evening song》という楽曲。これは、本誌取材班の「ハンガリーで誰でも知ってる民謡があったら教えて」という質問に応えてのもの。「よかったら演奏してみようか?」とチューバのヨーゼフ・バズィンカ二世さんの一言を聞き逃さず「ぜひ!」とあつかましくもお願いして演奏していただいたのです。
当然のように暗譜。現地では、日本における《ふるさと》みたいに、誰でも唄えるらしい。彼らには関係ないけど、現地で行われたフラッシュモブの様子がこちらに。
彼らの詳細(その日本式表記も含め)やハンガリーの管楽器事情等は10月号に掲載予定。お楽しみに。